家ボス不在。うるさい人が居ないと、こんなに静かだった。

普段の私は、家ボスとよく喧嘩をする。

しかも、なかなか派手だ。

ご近所さんが静まり返るくらいの大声で言い合うこともある。

喧嘩のたびに、

「もう施設に入ったらええのに!」

そう本気で思っていた。

ところが今回、家ボスが入院し、その後ショートステイで生活することになった。

すると、不思議なことが起きた。

家の中が、驚くほど静かなのである。

テレビの音も聞こえない。

「ご飯まだ?」

という声もない。

「あれ取って。」

もない。

毎日「うるさいなぁ」と思っていたはずなのに、その声が聞こえないだけで家の空気まで変わってしまった。

家ボス中心の毎日だった

家ボスがいなくなって初めて気付いた。

私は思っていた以上に、家ボス中心の生活を送っていたらしい。

朝は母のために朝ごはんを作る。

買い物へ行けば、母の好きな物や必要な物を探す。

夜ごはんも、母が食べやすい物を考える。

でも、自分一人になると、

「何でもええか。」

で終わってしまう。

悔しいけれど、家ボスは家の中でしっかり存在感を放っていた。

病院でも家ボスは家ボス

面会へ行くと、少し元気がないかなと思った。

すると突然、

「あんた、お弁当買ってき。ここで一緒に食べたらええねん。」

と言い出した。

病院やで。

ピクニックちゃうで。

思わず笑ってしまった。

入院していても、家ボスらしさは健在だった。

帰りたいと言わない

ショートステイへ移ってから面会へ行くと、

「もう二階へ上がるから帰ってええで。」

と、あっさり言われる。

家へ帰りたいとは、一度も言わない。

病院がよほど嫌だったのか。

それともショートステイが居心地いいのか。

理由は分からない。

正直、少し寂しかった。

もしかしたら、新しい生活に少しずつ慣れてきているのかもしれない。

今日の学び

介護をしていると、

「もう限界。」

と思う日もある。

喧嘩もするし、大声を出す日もある。

それでも、いなくなると気付く。

家ボスは、いつの間にか私の毎日の一部になっていた。

うるさいと思っていた声も、今は少し恋しい。

家ボスは新しい生活に慣れ始めている。

でも、その生活に慣れていないのは、どうやら私の方らしい。

私も少しずつ慣れていかなあかんのやろう。

それでも一つだけ願うことがある。

家ボス。

また「うるさいなぁ」って言わせて。

そして、私のことは忘れんといてな。

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