回遊魚の女

日常を楽しむ

朝のホームで出会う女

朝のホームで、たまに見かける女がいる。
服装は綺麗。化粧もバッチリ。どこかのブティック勤めかと思うくらい整っている。

だが、脚だけが異常に忙しい。

電車内は脚がライブ会場

電車を待つ間も膝はガクガク。
乗り込めば、3人掛けの席に座り、脚を開いたり閉じたり、組み替えたり、挙句の果てには
貧乏ゆすりまで始める。

しかもかなり激しい。

私は絶対横には座らない。
振動が来るからだ。

見た目は上品なのに、脚だけがライブ会場。
止まったと思えば今度は脚を組み、また揺れる。

スマホを触り、髪を触り、また脚が動く。

とにかく、じっとしていない。

今日も朝のホームで会った。
電車を待っている時点で既に膝が揺れていた。

「まだ乗ってもないのに、もう始まってるやん…」

電車の中では、脚がドリルのように激しく回転する。
横には友達らしき人もいる。

だが誰も注意しない。

もうあれは友達の中で、
“そういう生き物”として完成しているのだろう。

見ているこっちが落ち着かない。

その時、ふと思った。

――この人、回遊魚や。

止まったらあかんのや。

ホームでも揺れ、車内でも泳ぎ続ける。
水がなくても動き続ける、陸の回遊魚。

その日、一番静かだったのは、電車だけだった。

雨の日は発光仕様に進化

今日も真正面には例の貧乏ゆすり女。

雨の日仕様でエナメルの黒長靴。

これが動くたびに

ピカッ✨

ピカッ✨

と光る。

ただでさえ貧乏ゆすりが目立つのに、反射機能まで搭載している。

そして今日も隣に知人らしき人が座っていた。

口も動く。

手も動く。

ジェスチャーも大きい。

脚も動く。

長靴も光る。

忙しい。

実に忙しい。

朝の通勤電車とは思えない活動量である。

私はふと思った。

朝からそんなにエネルギー使って大丈夫か?

仕事が始まる前に、すでに一日の運動ノルマを達成している気がする。

さらに化粧もバッチリ。

ということは、

家でも早朝からかなりエネルギーを使ってきたに違いない。

起床。

身支度。

化粧。

通勤。

貧乏ゆすり。

会話。

ジェスチャー。

発光。

忙しい。

この人、回遊魚や

もしかしたらこの人、

コンセントで充電しているのではなく、

自家発電なのかもしれない。

そして、ふと思った。

ドラム叩いたら上手なんかもしれん。

手も脚も器用に動かしている。

私は朝から静かに座っているだけなのに、

目の前では一人だけ発光型回遊魚が躍動していた。

私は別に、注意したいわけではない。
ただ、朝の静かな電車の中で、あれだけ全身を動かしている人を見ると、どうしても目に入ってしまう。
今日も私は、見ないようにしながら、しっかり見ていた。笑

今日も回遊魚は元気だった。

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