朝から母がデイサービスを拒否。
ピンポーン。
インターフォンが鳴った瞬間、
「どちらさん?」
そう言いながら、
モニターを見る前に玄関へ直行。
ゴールデンウィーク前、
妹が強引に業者を呼んで、
モニター付きインターフォンを設置した。
しかし我が家では、
“確認してから開ける”
という最新機能より、
“音がしたら即開け”
という野生の本能が勝つようだ。
玄関にはデイサービスのお迎え。
すると母、
「私はそんな約束してない!」
そして私を指差し、
「アンタか!契約したん!」
と怒り出す。
いや、何回も説明したやん。
さらに、
「そんなん勝手にせんといて!」
「私はもう歳やからそんな所行かれへんねん!」
と言いながら、
普段は誰よりシャキシャキ歩く母が、
こういう時だけ急にヨタヨタ歩きになる。
名演技である。
私は心の中で、
“その芝居、だいぶ仕上がってきたな”
と思いながら、
「みんな待ってるから早く準備して」
と声をかけた。
すると最後に母、
「覚えとけよ!」
「私に何かあったら、化けて出たるからな!」
と、任侠映画みたいな捨て台詞を吐きながら出発。
数分前までヨタヨタ歩いていた人とは思えない声量である。
玄関が閉まった後、
私は静かにため息。
……何で毎回、
出発までが一番ハードなんやろ。
だが、こちらも止まってはいられない。
母を送り出した後は、
食事後、片付けをして、
買い物を済ませ、
掃除、晩ご飯準備
気が付けば一日終了。
私の休日、
どこ行った。
介護って、
家でじっとしてるイメージを持たれがちやけど、
実際は“常に時間との戦い”やと思う。
しかも朝から、
「化けて出たるからな!」
でスタートしている。
なかなかハードな人生である。
……もしかして母の元気の源、
私なんちゃうかと思う時がある。
毎朝ここまで全力で怒れるって、
逆にすごい。

家ボス、私の顔を見たらゴングが鳴る。
最近気づいた。
どうやらうちの家ボスにとって、私の顔はゴングらしい。
朝は平和である。
しかし私が近づいて、
「マスク持った?」
「補聴器つけた?」
この確認をした瞬間…
カーン!!
試合開始である。
「行かへん。」
「まだええ。」
「そんなもんいらん。」
朝からデイサービス攻防戦。
拒否、反論、言い訳の連続。
こちらも負けじと、
「今日は行く日やで。」
「みんな待ってるで。」
「準備だけしよ。」
と応戦する。
リングの上では毎回フルラウンド。
やっと玄関まで連れて行けば、
今度は靴で粘る。
外へ出れば歩く速度で抵抗。
車が見えたら最後の悪あがき。
毎回よくこれだけ作戦を考えられるもんやと感心する。
それでも無事に送り出した瞬間、
試合終了。
私は朝から一試合終えたボクサー並みにぐったり。
デイサービスの職員さんには、
「今日も元気でしたよ。」
…いやいや。
その元気、全部うちで使い切ってから行ってます。
家ボスにとって私の顔は娘ではない。
今日もまた、ゴングなのである。


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