家庭内特別案件:母の暴走三連発

母との一戦が始まると、なぜかご近所さんが静かになる。

さっきまで聞こえていた生活音。お茶碗を洗う音。テレビの音。窓を閉める音。

それが、ある瞬間からピタッと止まる。

たぶん。いや、絶対聞いている。「また始まったぞ」そう思っているに違いない。

こちらとしては真剣である。でも途中から、こっちまで変な空気になってくる。母も負けない。私も引かない。気付けば、親子というより討論番組。しかも観客付き。

たまに静かすぎて逆に気になる。「今日、人おらんの?」と思うくらい静か。いや、居る。絶対居る。ただ、聞いている。

そして戦いが終わる頃には、また少しずつ生活音が戻ってくる。お茶碗の音。外の話し声。日常再開。

たぶんご近所さんの中では、うちの親子喧嘩も季節の風物詩になっている。

母の暴走は、討論番組だけでは終わらない。

ある夜、家で毛染めをした。ちゃんと時間も計算して、お風呂も先に洗って、湯も沸かして準備万端。今日は完璧。そう思っていた。

毛染めって、タイミング命やん?早すぎてもあかんし、遅すぎてもあかん。だから私は、終了時間から逆算して全てを動かしていた。

そして運命の時間。「よし、流す!」そう思い、お風呂へ向かう為に下へ降りた。

すると。風呂、使われてる。

……え?しかも母。いやいやいや。なんで今なん。今日に限ってなんで今入るん。さっきまで全然動く気配なかったやん。しかも、めっちゃくつろいでる。

私は頭に毛染めを塗ったまま、ただ立ち尽くした。

人生、段取り通りに行かない事は知っている。でも。せめて毛染めの日くらい、平和に終わらせてほしい。

その後。ご近所さん、又静かになる。

そんな静けさの中、母の暴走史上、最も語り継がれるべき事件が起きる。

父に手を合わせようと思い、祭壇の電気をつけた。

ポチ。……つかない。あれ?と思い、もう一度押す。ポチ、ポチ。それでもつかない。

球切れかなと思いながら、祭壇の後ろを覗き込んだ瞬間、私は固まった。

コンセントが無い。いや、正確には。切られている。しかも綺麗に、ハサミで。

一瞬、頭が追いつかなかった。なんで?何が起きた?

私は母に聞いた。「これ、なんで切ったん?」

すると母は、悪びれる事もなく普通に言った。「もう要らんから」

いやいやいや。“もう要らん”で切る場所、そこなん?しかも祭壇。父、まだ普通に居てるけど。

ツッコミを入れようと思ったのに、この日は言葉が出なかった。唖然。完全に唖然。

家庭内特別案件の中でも、かなり上位に入る事件である。

ちなみにその日も、ご近所さんは静かだった。

今日の学び

仏壇のコンセントは、たまに確認しよう。
犯人は、だいたい身内である。

そして、祭壇をこれから買う人は電池式も検討してみて、
置き場所の自由度が上がるよ。😊


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