母にプレゼントした財布がある。
ちょっと奮発して、いいものを選んだ。
長く使ってくれたらいいなと思って。
数日後。
何気なくその財布を見て、固まった。
…固まった。
そこには、はっきりと書かれていた。
マジックで。
太字で。
母の名前が。
いやいやいや。
そこに書く?
しかも油性で?
「自分のやって分かるように」
そう言われたけど、
分かり方、もうちょいあったやろ。
高級ブランド財布、まさかの母専用カスタム仕様。
勝ってるのはブランドじゃなくて母でした。
家庭内特別案件:白い靴の危機
真っ白の靴を買った。
新しい靴って、ちょっと気分が上がる。
汚したくないし、大事に履こうと思っていた。
なのに。
母がその靴を見るたびに言う。
「それ、私のやろ?」
いや違う。
どう見ても違う。
サイズも違う。
買ったの私。
でも母は納得しない。
「なんであんた、私の靴履いてるん?」
いやいやいや。
その理屈、どこから来てるん。
しかも今回は、嫌な予感がしていた。
なぜなら過去に一度、ブランド財布に名前を書かれた前科があるからだ。
油性マジックで。
あの悲劇は忘れられない。
だから今回も、母が靴を見るたび少し緊張する。
そしてついに出た。
「名前書いとかなあかんな」
……やめて。
それだけはほんまにやめて。
ブランド財布の二の前になりそうだ。
白い靴の後ろにフルネームを書かれそうで、私は今日も気が気じゃない。
玄関開けたら、正座の母
在宅介護をしていると、驚かされることは日常茶飯事。
今日、仕事終わって帰宅。
ガチャッと玄関の鍵を開けた瞬間――
薄暗い玄関に、母が正座していた。
しかも絶妙なタイミングで、玄関のど真ん中。
「うわっ!!」
思わず後ろ下がった。
一瞬、何が起きたか分からん。
電気も付いてない。
静か。
そこに正座の老婆。
怖さが強すぎる。
「何してるん!!」
って聞いたら、
「靴、揃えてた」
いや、タイミング完璧すぎるやろ。
せめて物音くれ。
その瞬間、嫌な予感がした。
靴にマジックで名前でも書かれたらチーンである。
私は急いで下駄箱を確認した。
幸い、無事。
まだ社会復帰できる靴やった。
ほんま油断ならん。
うちの母の親切は、
たまに恐怖とセットでやって来る。
次は財布か、靴か。わからへん。ただ一つ言えるのは、
どうせ書くなら、ショートステイ用のパンツとシャツに
してくれると、私の手間も省けるのになあ。
思い通りにいかんな笑。


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