妹ボス、ユニバの服に全力 ⑤

妹ボス

……ユニバ言うてしもたな。

「忙しい」の中身が遊びやと、自分でバラしてしまった妹ボス。

少し考えたのち、渋々、土曜日の朝一番で母を眼科へ連れて行ってくれた。

自爆の威力、すごい。

ここまでは良かった。

問題は、ここからや。

⸻

ユニバの2日前、夜11時。

スマホが鳴った。

明日は、友達と和歌山日帰り旅行の第二弾。

(ユニバの前日や)

直売所でワカメを買うため、朝4時半起きに備えて、早めに寝ていた。

「寝てた?」

寝てた?と聞きながら、喋り続ける妹ボス。

聞く気ないやんか。

質問の形をした宣言やんか。

用件は、ユニバの服。

「それでええんちゃう」

そう言って、私はワカメの夢に戻った。

……つもりやった。

⸻

翌朝4時半。

妹ボスに叩き起こされた私は、それでも和歌山へ向かった。

まずは淡島神社でお参り。

「今日も一日、幸せでありますように」

手を合わせて、あの穴くぐりもして、気分は上々。

ランチは大当たり。

食べきれない量が出てきて、友達と3人でわけわけ。

それでも残ったものは、じゃんけんで好きなものを取っていくゲームになった。

雨予報やったのに、車を降りてる間はほとんど降ってないか小雨。

恵まれた日やった。

そして、直売所のワカメ。

前回は80グラム。

今回は、500グラム。

友達と半分こ。

めっちゃ安かった。

幸せな旅やった。

⸻

そして、帰ってきたら。

またLINEが鳴った。

「この服でええかな?」

服の写真付き。

こっちは、

「何でもええやん」

と思う。

でも、こだわりの強い妹ボスは悩みに悩んでいる。

「それでええやろ」

と返して、一件落着。

のはずやった。

⸻

ユニバ当日の朝。

「ちょっと寒いから、こんなんは?」

写真3枚。

こっちは朝から仕事の準備で戦場やのに、なぜか私がスタイリストになっている。

「一番右は?」

「半袖は寒いかなあ」

「ほなロンTは?」

「無い」

「Tシャツに薄手のロングコート、あったやろ」

「Tシャツが無地しか無い」

無地でええやん。

何のこだわりや。

普段あれだけ百貨店に行ってるのに。

服も買ってるのに。

いざという時に着る服、ないんかい。

役に立たん服ばっかり買ってるんか。

それとも、買った服を忘れてるんか。

どっちや。

その後も、LINEは写真付きで何度も届く。

通知が鳴るたびに、

「また来た」

と思う。

気づけば私は、ファッションショーの審査員。

しかも出演者は、合格を出しても聞いてくれへん。

「もう白のブラウスとか無いん?」

そう言ったら、今度は本人とブラウスが一緒に写った写真が届いた。

「このブラウスでいけるかなあ」

ええんちゃう!

こっちは仕事やねん!

ええ加減にしてくれ!

⸻

結局、3日間。

私の「それでええんちゃう」は、一度も採用されなかった。

そして、ぱたりとLINEが止まった。

……結局、どうしてん?

ブラウスで行ったんか。

コートを足したんか。

それとも全部やめて、最初の服に戻ったんか。

あれだけ人を巻き込んでおいて、報告なし。

お礼なし。

ユニバの写真もなし。

答え合わせのない試験ほど、気持ち悪いものはない。

私はそのまま仕事をして、1日が終わった。

妹ボスが、服に全力を注いでいた3日間。

私は、ワカメに全力を注いだ1日を過ごした。

母の眼科は渋々。

ユニバの服は全力。

これが、我が家の妹ボスである。

コメント

タイトルとURLをコピーしました