妹ボス、我が道を行く 施設申し込みの日 ①

妹ボス

〜ナビ対決と、貰ってない小豆の話〜

朝から機嫌の悪い上司ほど厄介なものはない。

今日のそれは、私の実の妹だった。

第一幕:ナビ対決

待ち合わせ場所には10分前に到着。

妹ボスは休み。私はこの後仕事。

それだけでもう、こちらの方が忙しいはずなのに、到着するなり不機嫌全開である。

「携帯見てくれた? ナビ出しといてって言ったやん!」

LINEに気づいていなかった私が悪いのか。

それとも、そもそも道は前に見学に行った時に通っているのだから、覚えていて当然だと思っていた私が甘かったのか。

「この前行ったから、知ってるやろ」

「ここからは分からんねん!」

ご立腹である。

ならばと住所を聞いてくるのだが、その態度がなぜか偉そうだ。

「それも、あんた知ってるやろ」と言ってやった。

そう言われ、オロオロしながら自分の携帯に、ゆっくり、ゆっくり住所を入力し始める妹ボス。

あまりの遅さに、見かねた私が先に目的地を入れてナビを出した。

これが、どうやら火に油だったらしい。

以降、妹ボスは意地でも自分の携帯のナビだけを見ることに決めたようだ。

私のナビは、

「左です」
「この先、左です」
「左です」

と、健気に案内してくれている。

一方、妹ボスのナビは、なぜか遠回りの道を案内していたらしい。

全く正反対の右へ行った。

それでも妹ボスは、左へというナビに強引に右へ突き進んだ。荒っぽい運転で。

「いや、左って言うてるけど……」

私の携帯は、まだ諦めない。

「左です。その先、左です」

しかし妹ボス、完全無視。

結果。

盛大な遠回りをして、ようやく到着した。

それでも本人は、

「これでええねん!」

と、何かを振り切ったような顔をしている。

何がええのか。

いまだに謎である。

第二幕:貰ってない小豆

施設に着くなり、妹ボスのテンションは急に曇りから晴れ。

「そうそう! この前、施設が開設記念の小豆くれはってん。姉ちゃんの分、私が貰ってるから、お礼言っといてやっ」

……知らんがな。

私は貰ってない。

というより、存在すら知らなかった。

なぜ、私が貰ってもいない小豆のお礼を、私が代理で言うことになっているのだろう。

「……私、知らんねんけど」

「いや、私が貰ってるから」

知らん。

それはもう、あなたが貰った小豆である。

私の小豆ではない。

なのに、なぜ私がお礼を言うのだ。

妹ボスの世界では、どうやら「私が貰ったもの=姉ちゃんのもの」になるらしい。

第三幕:知ってますけど、の壁

そして、いよいよ申し込み本番。

私は施設の方に確認しながら、一つずつ話を進めていく。

すると又横から、

「それはこういうことやから」

と、容赦なく口を挟んでくる妹ボス。

いや。

今、施設の方に確認してるんですけど。

聞いてない。

まだ聞いてもいない。

それなのに、即断即決の解説が飛んでくる。

施設の方の説明を聞きながら、横では妹ボスの独自見解も同時に聞かなければならない。

情報が渋滞している。

ナビも、小豆も、申し込みの説明も。

今日一日、妹ボスは終始、

「私の方が分かってる」

を貫き通した。

結果?

ナビは遠回り。

小豆は私の知らないところで貰われている。

申し込みの説明は、施設の方より先に妹ボスが答える。

それでも妹ボスは、今日も我が道を行く。

まあ、妹だから仕方ない。

……いや。

妹だからこそ、もうちょっと私の話も聞いてほしい。

そんなことを思いながら、この後私は仕事へ向かった。

妹ボスは、休みである。

働くふじ

コメント

タイトルとURLをコピーしました